REPORT

GPイゾラブタン・プリン(UCI1.2)

開催日 2月23日
開催場所 スロベニア

142kmで開催されたスロベニアのワンデイレース。40名ほどの集団で迎えたゴールスプリントで宮澤崇史が5位、エドワード・グロス(ルーマニア)が7位に入り、グロスはアンダー23カテゴリーで最高位となり優勝。宮澤崇史はUCIポイントを獲得した。

出場メンバー:宮澤崇史(5位)、エドワード・グロス(7位)、リカルド・リカルド・スタキッオッティ(10位)、アレッサンドロ・マラグーティ(22位)、アレッサンドロ・ビソルティ(30位)、ダニエル・パウルス(31位)、山本元喜(82位)、黒枝士揮(DNF)

大門宏監督/マネージャーのレポート
今回のレースは、自分も久し振りに現場に帯同した。開催された街は、イタリアの国境から海岸沿いに約10km入ったところにあるのだが、以前はあったパスポートコントロールの検問は撤去されていていたり、ガソリンスタンドがユーロ表示になっていたのを見て、初めてスロベニアがEUに加盟していたことを悟った。調べて見ると最近のことではなかった……。自分はいったい何年ぶりにスロベニアに来たのだろうか………苦笑。

さっそく色々と難儀なカルチャーショックに陥った……。まずぶち当たったのが有料の高速道路が国境付近まで繋がっていたこと。ここの国境の行き来に慣れてるルーマニアのグロスが妙に騒いでいたので、聞いてみると高速に入るには窓ガラスに貼るステッカーを買わないとならないらしい。スイスでは国境で貼ってなければ強制的に購入させられるが、ここでは自己責任なのだ。高速の出入り口で不定期でポリスが検問をやってるらしいが、おそらくグロスのチームは苦い経験があるのだろう……。「買ったほうがいい、必ず買うべきだ!」とやたらと薦める……。

しかしながら、どこにも表示がない(後日明るくなった昼間に通過してみると、確かに小さな表示看板があったが文字はチンプンカンプンのスロベニア語だった)。ポリスの財源対策? 苦笑。国境付近に住むイタリア人は知ってるんだろうけど、恐らく取締りの対象となる外国人は多いんじゃないかと思った。僕は日本人だから思うのかも知れないが、チョッと不親切。

前日の宿に到着した時は土砂降りだったが翌日はスッキリ晴れて絶好のレースコンデェション。今シーズン初めての「クラス2」のレースだったが、スタート前に山本や黒枝、他の外国籍メンバーにも「このレベル以下のレースはヨーロッパでは走らない。おまえたちに与えられるカレンダー(ミッション)には、このレベル以下は存在しない!」と念を押す。

早速スタート直後小さなアクシデントが発生……苦笑。今回のレースは昨年までランプレで走っていたスペツァレッティにとっても、監督初仕事でもあったのだが、「無線が入らない」と騒ぎ出したのだ。でも助手席にいた自分は即座に彼の初歩的なミスに気が付いてしまった。

彼はイタリアの無線機がスロベニアで使えないことを知らなかったのだ、見てみるとアンテナも設置されていない……。一瞬、自身の眼が点になった(ただコレはメカニックの西の責任とも言えないこともない……苦笑)。新米の監督にとってはストレスに満ちた(?)稼業がこうしてスタートしたが、お友達にも助けられオルガナイザーから素早く無線機をゲット。長年トップチームで活躍した豊富な経験と人脈が思わぬ展開で活かされた!?

全体的には2つの周回コースを絡め、道幅が狭く曲がりくねったコースレイアウト。チームカーが17番だったこともあって、監督からも状況が見えにくい展開が続いたが、序盤から数名の逃げグループが形成された。我々の選手はすべて約120名のメイングループで、後半の小さな周回コースに差し掛かるまで淡々とレースは進んだ。

今回はスロベニアという土地柄もあって、クロアチアを含む近隣諸国が多く参加していたが、彼らにとってはシーズン初レースだった選手も多かったと思う。こういう時期特有のクラッシュも多く見られたが、幸いにも我々の選手は誰も巻き込まれることなく終盤を迎えた。

ラスト20kmを過ぎて、メイングループも一気にスピードアップ。逃げグループも吸収され、ラスト10kmの丘でさらに集団はバラけて、約40名のメイングループのスプリント勝負に持ち込まれた。チームカーの位置から無線に耳を傾けながら様子を伺うかぎり、そのメイングループに我々のスプリンター格の3名(宮澤、グロス、スタキッオッティ)を含む6名が入る絶好の展開。各選手の調子は読み取ることはできなかったが決して勝てない展開ではないと期待した。

ゴール後、無線で誰が勝ったかアナウンスがなくチームカーを停めて選手を待った。なかなか選手は戻ってこなかったが、他のチームの監督からからイタリアのチームの選手が勝ったことを知った。我々は宮澤の5位が最高位だったが、宮澤本人はじめメンバーに笑顔はなかった、と同時に「勝てたレースを逃がした」という悔しさに満ちた、暗いムードが伝わってきた。

西メカニックと宮澤から聞いた話を整理すると、マラグーティがラスト500mで先行したタイミングで、宮澤が後ろに入り込もうとしたが、優勝(結果的に)したイタリア人に割り込まれてしまった。強引に体勢を立て直そうとしたときに誰かの後輪に接触。大きくバランスを崩し、順位を落としながら、別のラインから踏み直してのゴールだったらしい(接触した影響で前輪も中破)。

宮澤本人にとっては全く不本意な結果。グロスもレース後半にあわや落車というアクシデントに遭ったようで、膝に怪我を負い、チームメイトとの連携を考える余裕もなかったのであろう。選手からの事情、状況を聞くまでは、今回のチームメイト同士の実戦経験の浅さから招いた連携の失敗かと勝手にイメージしていたのだが、色々なネガティブな要素も深く絡み合ってらしい。まぁコレがレース、たとえ実力は抜き出ていたとして勝つのは本当に難しい、昔から先人の間で伝えられて来たことだが、たとえレベルが低くても毎回簡単に勝てるレースなど存在しないのだ。

前々回のレポートで、ドバイのレースは惜しくもUCIポイントは逃したものの、宮澤にとってはすごく収穫のあったレースだった……とお伝えしたが、今回はUCIポイントは獲得したものの、反省、課題の残った結果であった。

僕は昨年あたりから日本国内でもまことしなやかに囁かれているUCIポイントを基準とした選手の実力評価を懐疑的に捉えている。本来選手の真の価値が問われるべき全うな基準は、レースの難易度、一緒に戦ったチームと選手のレベルに置かれるべきだと思う。真の選手の実力を推し量る意味で、UCIポイント獲得をスローガンに、単純に一喜一憂するムードは選手の成長過程に置いても大きな妨げになるのではないかと危惧している。

本題から少々脱線してしまったが、今回のスロベニア遠征は山本、黒枝、両選手にとっても初戦であった。オフシーズンを挟んでレースから遠ざかっていた彼らにとって今回の曲がりくねったタイトなコースは、たとえレベルが低くても、一瞬とも油断できない緊張感に満ちた1日であったと思う。結果では黒枝はリタイヤになっているが、メイングループから離脱したのはゴールまで約10kmの地点であった。2人ともチームの一員として存在感を発揮できなかったことを悔いていたが、彼らの新たな冒険&挑戦は始まったばかり……。 小石とともに先週イタリア入りしたばかりの2人だが、まずは中身の充実したサイクル(リズム)でのトレーニングに時間を掛けることが優先課題……。. 学ぶべき課題は果てしなく多く大きな壁も高く立ちはだかるが、自身の持ち味を活かしながら成長していくことを期待したい。